カテゴリ:読書( 19 )

私が読んだ本(20)

狼の群れと暮らした男

ショーン エリス / 築地書館

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 ラジオ番組で紹介されていて興味がわいたので読んでみた。著者はロッキー山脈の山中で単身、野生のオオカミの群れに入り、2年間彼らの仲間として暮らした。野生動物を飼い、つまり人間の方へ引き込んでの研究は普通だが、この人は自分が人間をやめて野生動物と生活するという逆のことをしている。
 オオカミの群れの一員として彼らのルールに従い、共にシカの生肉を食い、風呂にも入らず生活していた。よく耐えたものだと思えるが、この人は過酷な自然の中でオオカミによって生かされてきた、とも言っている。驚いたことのひとつ。著者がある日、水を飲もうと谷川へ降りて行こうとした時、若いオオカミが体当たりをくらわし、彼を木の窪に押し込んで動けなくした。あとで分かったその理由とは、その時谷川にはハイイログマの大きなフンが落ちており、もし彼が知らずに降りていればクマに襲われていただろうというエピソード。
 科学者の多くは彼のやったことに否定的らしいが、野生動物にどっぷりつかった人の体験は貴重なものだ。そしてまだ知られていないオオカミの持つ能力、高い知能を垣間見た気がする。
さらに面白い語り口で聞きたい方、こちらで聞かれます。

クリック→「武田鉄矢・今朝の三枚おろし5月9日〜30日」
 
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by ishigamet | 2016-06-03 14:26 | 読書

私が読んだ本(19)

木 (新潮文庫)

幸田 文 / 新潮社

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 幸田文さんが樹木、特に大樹や老木を見たくて北海道から屋久島まで歴訪した物。全体に共通しているのは長く生きてきた木を幸田さんが尊敬して見ているところにある。人間が守ってやろうという上から目線の見方はしていない。
 面白かったのは「この春の花」の中で、ある老桜の大樹を世話していた人の話。その木は木一代のみんなが集って生きていると言う。つまり幹から枝、若枝までを曾々々祖父から玄孫まで一本の中に入り交じって生きているように思えると言う。それは一本の木が家系図のようになって今同時に生きているという意味だろうか。文章も良かった。
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by ishigamet | 2015-11-17 14:01 | 読書

私が読んだ本(18)

銀の匙 (岩波文庫)

中 勘助 / 岩波書店

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 著者の自伝的小説。明治20年代頃の話で、前編では著者は幼い頃、ひ弱な子だったせいで、伯母さんに溺愛といっていいくらい可愛がられる。伯母さんの背に負ぶさって幼い日に見たもの、感じたことをそのまま書いている。これと言って強い主張があるわけでなく淡々とした話だが、妙な懐かしさがあった。
 そのひとつは気弱な性格が昔の自分に似ていたこと。もうひとつは伯母さんの言葉が(その出身地は書いてないが)名古屋弁であったことにある。それも今の人が話す名古屋弁でなく、明治以前の人が使っていた名古屋弁。挙げると「どなた様でいらっせるいなも」「さあどうぞおあがりあそばいて」など。
 後編ではひ弱だった子が次第にたくましさが見える青年になっていく。
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by ishigamet | 2015-08-24 14:01 | 読書

私が読んだ本(17)

水惑星の旅 (新潮選書)

椎名 誠 / 新潮社

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 椎名誠さんの本は「岳物語」を始めとする日常ドタバタ私小説(ご本人がそう書いている)は好きでよく読んでいた。今回は硬そうな内容の本だったが、椎名さんの文章なら読み易いだろうと読んでみた。
 世界各地を旅してきた椎名さんによる水についてのルポ。「きれいな水は当たり前じゃない!」と帯にあるように、読むと都市に住む日本人がいかに水に恵まれた生活をしているかよく分かる。そして人口増加による水飢饉、中国の川の汚染、外資がねらっている日本の水源地、バーチャルウォーター(穀物、食肉が製品になるまでに必要な水)の不足のことなど、気が重くなる内容になっている。
 希望の光としてあるのは雨水利用の普及、日本企業の技術も期待されている海水淡水化や排水浄化装置の進歩だろうか。それらの技術が水飢饉を救えるかも知れないと言う。
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by ishigamet | 2015-08-02 10:54 | 読書

私が読んだ本(15)(16)

 この2冊の本はあるビジネスマンの方のブログで紹介されていたものです。

身近な雑草の愉快な生きかた

稲垣 栄洋 / 筑摩書房

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 この本は最近評判なようで、新聞広告でも見たし、色々なところで紹介されている。身近にある雑草の生き残り戦略が分かりやすく書かれている。
 虫を誘って受粉するというのはよくありそうなことだが、競争相手の少ない、人によく踏まれる場所にあえて進出するとか、固いアスファルトの下に根をめぐらす種がある。一番驚いたのは「スズメノカタビラ」で、ゴルフ場では刈られる芝の高さに合わせて穂を付けるという。
 「柳に風」という言葉がよく出てきた。やわらかさが強さなのだ。
 それと昔からなじんでいる雑草にも有史以前や稲作伝来とともに入って来た外来種が多いことにも気付いた。

世界で1000年生きている言葉 (PHP文庫)

田中 章義 / PHP研究所

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 著者は角川短歌賞を受賞した歌詠みであり、元国連WAFUNIF親善大使でもある。世界各地を旅しながら、その土地に古くから伝わる言葉をその地のエピソードとともに紹介している。
 特に良かったと思うものを挙げると。

 「愚かな人々とともに歌うより、賢い人々とともに泣くほうがいい。」(セルビア共和国)
 「片方の手が、もう片方の手を洗ってくれる。」(南アフリカ共和国)
 「愛することは長く、憎むことは短く。」(ミャンマー連邦共和国)
 「手を洗う手はきれいになる。」(ナイジェリア連邦共和国)
 「やる気があれば、半分は出来上がり。」(チェコ共和国)
 「意志があれば、手段は生まれる。」(バングラデシュ人民共和国)
 「他の人を許すたびに、きみ自身を強くしている。」(ペルー共和国)
 「太陽に顔を向けろ。影はあなたの後ろにできるから。」(マオリ族)
 「与えようとする人が、与えられる。」(ブラジル連邦共和国)
 「使わないと古くなる。よく使っていると新しくなる。」(カンボジア王国)
 どれもがシンプルな言葉で覚えやすい。
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by ishigamet | 2014-07-06 16:21 | 読書

2013年になってみて

つぎはぎプラネット (新潮文庫)

星 新一 / 新潮社

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私が読んだ本(14)
 このほど星新一さんの未収録作品集が文庫本で出るとのことだったので、久しぶりに読んでみた。
 星さんの本は高校生の時に「ブランコのむこうで」を読んでから、それが面白かったので学校帰りに本屋へ寄っては買っていた。いつしか本棚には新潮文庫の黄緑色の背表紙がどんどん増えていった。
 この本には1960年代頃に未来の話として書かれていたショートショートが多かったが、それが2013年の今、実現している物とまだしていない物がある。
 実現している物はテレビゲーム、テレビ電話、何でも出来る電子計算機(パソコン)、チャンネル数50のテレビ、レンタルビデオ、ビデオレコーダー、自動掃除機、カタログテレビでの買い物や電送される新聞(インターネット)など。
 まだ実現していない物はタイムマシン、ヘリコプタータクシー、一般人の宇宙旅行、月面都市、立体テレビ(3Dはあるが)、自動操縦自動車(試作はある)、自動調理器、好きな夢を見る装置。それとインターネットで買い物は出来るが、物が配達パイプで送られて来るなんてことはない。
 それとこの本の中には書かれていなかったが、今ある物に携帯電話がある。星さんも皆が常に電話を持ち歩く未来は予想していなかったのだろうか。
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 巻末にこのような全作品読破認定証がついていた。これはショートショート集を全て読んだという前提の上で有効とのこと。私は半分以上読んでいると思うが、全作品には及ばない。そのため認定証は無効である。
 
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by ishigamet | 2013-09-06 14:03 | 読書

野生動物はしたたか

自然

生物いまどき進化論 ~都市化がもたらす人工サバイバル (知りたい!サイエンス)

藤本 和典 / 技術評論社

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 私が読んだ本(13)
 ここ30年くらいで都市へ野鳥などが進出して来ていたことは感じていた。原因としては街路樹が大きく育ってきたことや鳥の子育ての天敵であるイタチやヘビが都市にいなくなったこと、人間が鳥に無関心であるため警戒心が薄れ、人間との距離感がある時切れた、などが挙げられる。野生の動物は人が思うよりも賢くてしたたかで、環境が変わったら変わったで適応して生きている。街灯を利用して夜もエサを捕るツバメ、動物食のカイツブリやハクセキレイがパンを食べるようになった、などその例が読み易い文章で紹介されている。
 著者は自然観察をする上で思い込みをしないことが大切だと言っている。自然破壊だと思われていたスキー場も夏に行ってみると草原を好む野鳥や昆虫の宝庫になっていたという。森を切ったことによって、日本の気候では維持が難しい大草原という環境が保全されていたためである。しかし、夏のスキー場は閉鎖されていることが多いらしい。自然観察会に解放したら、と著者は提案している。
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by ishigamet | 2011-11-22 19:50 | 読書

『どくとるマンボウ青春記』はずっと本棚に

小説・詩・読み物
私が読んだ本(12)

どくとるマンボウ青春記 (中公文庫)

北 杜夫 / 中央公論社

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 先日、作家の北杜夫さんが亡くなった。最近、娘さんの本では「ヨタヨタの父」なんて書かれていたので大分弱っておられるのかなとは思っていたが、さびしい限り。
 私が北さんを知ったのは小学生の時に見た「違いの分かる男のゴールドブレンド」のコーヒーのCMであった。あとは『すばらしき仲間』とかいうテレビ番組に遠藤周作さんらと出演されていて、変わったしゃべりかたをする人だなという印象を持っていた。
 そして6年生くらいの時にNHKの少年ドラマシリーズで見た『ぼくのおじさん』というドラマが面白かったので、その後中学校の図書室で借りて読んだ。北さんの本を読んだのはそれが最初だったろう。高校に入ってから教科書で『どくとるマンボウ昆虫記』を習って、それも面白そうだったので文庫本を買って読んだ。続けてマンボウシリーズや小説もよく読んだものだ。『幽霊』だけは意味が分からなくて途中でやめたが、あとはみんな読み易くて楽しめた。特に『どくとるマンボウ青春記』は何度も読み返したし、中にあった「人生は棒に振れ、しかし一日はもっと大切にすべきだ」いう一文を高校の卒業アルバムで引用させてもらった。この本は東京へ行った時も送る荷物の中に入れていた。
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 そして今でも本棚のよく見える所に並べてある。       
                                       合掌
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by ishigamet | 2011-10-30 16:20 | 読書

私が読んだ本(11)

自然

となりのツキノワグマ (Deep Nature Photo Book)

宮崎 学 / 新樹社

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 昨年秋のクマ出没ニュースもあって、興味があったので読んでみた。宮崎学氏が中央アルプス周辺で2005年以降ツキノワグマを撮影し調査したもの。
 クマが減っているという思い込みを捨て、宮崎氏が調査した結果、関東甲信越に限っては30年前よりもクマはあきらかに増えているという。そして荒廃したと言われている森は多様な植物が生い茂り、動物が棲みやすい条件になっている。それは写真からもよく分かる。特に驚いたのは「クマ棚」と呼ばれる、クマが樹上に作る枝や葉を敷き詰めた跡が住宅街のすぐ近くに多く点在した写真だった。
 保護か駆除か、どっちにしても正確な生息数の把握が必要だと著者は言う。
 
 私が思ったのは森で生きるクマは私達が知らない樹木との付き合いをよく知っているのではないか、ということ。100年後の子孫のため、冬眠穴になっていく樹洞を作ったり、もともと適さぬ場所に植林されたヒノキを枯らし、やがては雑木林に復活させていく。クマは森に重要な役割を果たしていることも分かってくる。
 人間と樹木の時間軸は違う。人間は長くて100年だが、樹木は1000年を超える。森で生きるクマは種のレベルでは樹木の時間軸に合わせて生きているとも言う。
 私達は100年後の子孫のことなど考えているのだろうか。もしかするとクマよりも私達の方が危うい位置にいたりして。
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by ishigamet | 2011-06-30 14:22 | 読書

私が読んだ本(10)

鳥あそび

小宮 輝之 / 二見書房

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 まず、まえがきを読んで著者の生い立ちに惹かれて読んだ。上野動物園園長である著者は子供の頃、いろんな生き物を飼うのが好きで熱中していたという話。それは私の少年時代とよく似ていたからだ。
 概ね、野鳥については初心者向けの内容になっているが、少し変わっているのは「足拓コレクション」。鳥の足に墨を塗り、紙の上を歩かせて作ったらしい。今では鳥類500種、ほ乳類240種、は虫類や両生類合わせて750種になるという。鳥の足拓が実物大で23種収録されている。
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by ishigamet | 2011-05-02 17:50 | 読書